あまつち

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Walk Behind The Hunter

言葉にできない「気持ち」を探して ーー 第2話

第1日目

第2日目

前回の取材からちょうど1ヶ月が経とうとしていた。
最近罠猟の調子がいいとの連絡を受け、早速取材を申し込んだ。

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(山に入る時は山蛭などから足を守る為、長靴を履いていく。)

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今日の高原町は朝から雪の予報だったため、14時からのスタート。早速いつもの御池の待ち合わせ場所に来た牧氏の軽トラに乗り込み、罠のチェックに同行した。

足跡はあるが、罠の上を歩いた形跡がなく、獣道さえ通っていないようだ。鹿や猪たちは1ヶ月くらいで歩く道を変える習性もあるという。前年の動物たちの行動パターンを思い出しながら、牧氏は踏まれなかった罠の上をもぞもぞと探っている。杉の葉がクッションになり罠が踏まれていなかったようだ。

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ゆっくりと森の奥深くへ入っていく。
ここは宮崎県高原町という、宮崎と鹿児島の県境に位置し、2006年、「日本で最も美しい村連合」に加盟、霧島火山群の麓に位置する山や川に囲まれた場所だ。先日、友人の結婚式で同じ高原町にある「極楽温泉」という九州山河料理を出す温泉旅館で食事をした時、猪鍋や鴨料理が出た。そこの鴨は牧氏が撃ち落とした鴨だそうだ。東京で食べた鴨を思い出したが、あれは一体何だったんだろうと疑問になるくらい、そこの鴨は美味しかった。味や栄養、エネルギーは獲った場所から離れると、距離とともに変化していくのだろう。

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そんなことを考えながら牧氏の後ろを歩いているといつの間にか猟銃の袋を取り、ポケットにしまっていた。近くに動物がいるのだろうか?私にはわからない。彼はまた静かに歩き始めた。私も邪魔をしないように10m以上距離を開け追いかけていく。「バン!バン!」と、ものすごい音がなった。
発射音の残響が静かな森の音に重なる。

遠くを見つめる狩猟者。獲物は消えていた。
仕留めるには50〜70mまで気配を消しながら接近しないといけない。外れた弾丸は周囲の木に埋め込まれ、人間と動物の勝負の痕跡となる。

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text by 東 花行 / Hanayuki Higashi

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